人口密度の高いエリアは家賃が高くなるか?

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9月中旬の京都市鴨川の様子です。荒神橋から北を望んだ鴨川です。台風の影響で水量は多めですが、川沿いは台風一過で風も吹き、日中でも過ごしやすくなっています。

 さて、今回は人口密度と家賃(賃料)の相関をグラフで確認したいと思います。
一般的には家賃(賃料)は人口密度に比例すると言われます。

 市場原理に従うならば、人口密集しているエリアでは物件の需要が供給を上回るため、家主は家賃を上げても借り手が見つかります。従って、家賃の上昇圧力が強まり、人口が密集しているエリアの賃料は高くなるという仕組みです。逆に、人口密度が下がれば借り手が少なくなるため、家主側には家賃を下げる圧力が強くなり、家賃は安くなります。

 このサイトでは京都市の賃貸物件についてその賃料相場を定点観測しており、今回は実際に人口密度と賃料の関係を見てみたいと思います。まずは京都市の行政区ごとの人口、面積、人口密度を確認したいと思います。

京都市の人口 (2019年8月現在)

京都市の行政区毎の人口です。最も人口が多いのは伏見区で27.7万人であり、もっとも少ないのは東山区の3.7万人です。

京都市の面積 (2019年8月現在)

続いて面積です。吸収合併を経て、京都市は今の面積となっています。最も広いのは右京区の292km2、最も狭いのは下京区の6.8km2です。右京区、左京区、北区は北部の山間地域も含まれるため面積が広くなっています。

京都市 行政区 の地図

京都市の人口密度(2019年8月)

人口を面積で割ったものが人口密度です。面積が狭くて人が多いほど人口密度は高く、面積が広くて人口が少ないほど人口密度は低くなります。中京区、上京区、下京区は面積が狭い割に人口が多いため人口密度が高くなっています。中京区を見てみると1km四方に15,000人が暮らしていることになります。この人口密度は東京の渋谷区、練馬区と同程度の人口密度になります(2018年10月時点)。

人口密度の高いエリアは家賃が高くなるか?

では、今回の本題である人口密度と家賃(賃料)の関係をグラフ化してみたいと思います。データは2019年8月のデータです。

横軸は人口密度、縦軸は物件の平均賃料です。うっすらと右肩上がりの正の相関が見て取れます。
 細かく見てみると、下京区と上京区の人口密度は同じくらいですが、平均賃料は下京区の方が高くなっています。これは上京区は単身世帯のワンルームや1Kの物件が多く、平均賃料が下がっているためです。一方、下京区はファミリー世帯向けの物件が上京区よりも多く、面積が広い分、平均賃料が高くなっています。

 次に東山区と南区ですが、人口密度も近い値であり、平均賃料も似通っています。南区の人口は東山区の約2倍、面積も約2倍となり、中京、上京、下京の周辺の住宅地という意味では同じ傾向となっていることが分かります。ただし、あくまでもこれは平均値での話であって、物件の少ない東山区は、調査する月によって値の出入りが激しく、バラつきの大きい区であることが分かっています。

 次に山科区と伏見区ですが、こちらの人口密度も平均賃料もほぼ点が重なっています。暮らしてみると分かると思いますが、伏見区と山科区は居住環境や物件にあまり違いが無いとも言えます。

 最後に左京区、右京区、北区、西京区ですが、山林や農地など自然豊かな環境に恵まれ、人口密度は相対的に低くなります。一方、家賃を見ると、住宅地が多く人口が密集している上京区よりも西京区、左京区の平均賃料が高くなっています。これは上京区が1Kはワンルームなど単身世帯向けの物件が多いの対して、西京区、左京区は広いファミリー世帯向けの物件が多いことを表しています。

 上記グラフでは1Kや3LDKなど含めてすべての間取りの平均の賃料です。上の例のように1Kが多いエリアは賃料が安くなり、3LDKが多いエリアが賃料が高くなる傾向があります。これを正規化するために面積あたりの賃料(単位賃料)について、同様に人口密度と単位賃料のグラフを作成してみました。

人口密度と面積あたりの賃料の関係は?

上のグラフがその結果です。正の相関が更にはっきりしてきたかと思います。「単位賃料」とは面積あたりの賃料であり、その物件の地価のような指標です。

11の区は、その特徴からそれぞれ大きく4つのグループに分けられます。

  • 中京区、下京区、上京区
    市中心部に位置し、人口密度が10,000人/km2を超えるエリアです。区の面積のほとんどを、住宅・商業・工業エリアで占めており、単賃料は2,100円/m2を超えています。
  • 東山区、南区
    東山区は鴨川を挟んだ東側、南区はJRを挟んだ南側に隣接する区であり、商業・住宅エリアとしては市街地と連続性があります。東山区には山林や寺社が数多くあり住宅地の面積はその分少なくなっています。景観条例もあるため新たな宅地開発や大規模なマンション建設は厳しい状況です。一方、南区はその南部に工業地域が広がり、住宅地は南区の北部と西部に集中しています。
    東山区も南区も住宅地に占める人口は5,000人~7,000人と同じくらい(人口密度が近い)です。
  • 伏見区、山科区、西京区
    人口密度は西京区が約2,000人/km2、伏見区と山科区が約5,000人/km2となります。西京区は桂坂や洛西ニュータウンなどの宅地造成や高速道路の開通、JR桂川駅の開業および周辺の商業施設の充実化など、利便性の向上により近年人口が増加しているエリアです。
    単位賃料は1,600円/m2~1,700円/m2の間にあり、3つの区とも同様の値段です。
  • 右京区、左京区、北区
    地図を見てもらうと分かるとおり、北部の山間部も面積に含むため人口密度は低く算出されますが、平野部の人口密度は東山区と同じくらい、マンションが密集しているエリアは上京区と同じくらいの人口密度と推測できます。

おわりに

 今回は、人口密度と賃料の関係をグラフにしてみました。
 グラフを見てみると、人口密度が高いと賃料も高くなる右肩上がりの傾向のグラフとなっており、当初の予想は正しかったと言えます。
 更に言えば、人口密度と面積あたりの賃料(単位賃料)はもっと正の相関が強く、人口密度が高いエリアほど物件の単位面積あたりの賃料、つまり地価が高くなっていることが分かりました。
 物件を選定する際に、人が多いエリアを選ぶか、少ないエリアを選ぶか、好みはあるかと思いますが、西京区は交通の便も良く、人口密度も低いため賃料も手頃でおススメです。物件選びの参考にして頂ければと思います。