コロナ禍での京都市のホテルの稼働率

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コロナ禍で観光客が激減した京都市におけるホテル稼働率の推移について調査しました。出展は京都市観光協会データ月報になります。

2022年2月のレポートによると
京都市のホテルの客室数は55,671室、客室稼働率は32.1%とのことです。
観光ホテル、ビジネスホテル、旅館、簡易宿泊所を含めた値であり、およそ3分の1の1万8千室しか稼働していないことになります。

また、月間20日以上休業した施設は46.6%とのことで、半数程度のホテルが支出を抑えるために休業日を設けて実質の稼働率を上げる方策を取っているようです。
これにより実質の稼働率は60%まで改善します。

京都市の宿泊施設数は2月時点で3596施設となり、一年前と比較すると180施設ほど減少しています。(年ごとの施設数の遷移についてはこの記事の後半にあります。)

稼働した1万8千室を施設数3596件で割ると、1施設あたり月に5室の稼働ということなります。

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稼働率の推移

以下にコロナ前の2019年6月から2022年1月までのホテルの稼働率を示します。

コロナ以前の2019年(令和元年)に京都市を訪れた観光客数は5350万人、そのうち外国人観光客数は890万人でした。

京都市は毎年春の桜の時期と秋の紅葉の時期にたくさんの観光客が人が訪れる傾向があります。

そのため、ホテル稼働率のグラフに示すように2019年11月の紅葉シーズンには国内外から多くの人が訪れ、ホテルの稼働率は月平均89.1%を記録しています。週末や祝日はほとんど空室が無く、予約が取れないと苦情が出るほどでした。

当時の記録を見るとホテル客室数は5万3千室、施設数は3993施設とのことです。

従って、稼働客室数は4万8千室となり2022年1月の2.5倍の客室が稼働していたことになります。逆に言うと2022年1月は2019年11月と相対比較すると40%しか稼働していないことになります。

このあと例年11月をピークに冬にかけて稼働率が下がり、春の観光シーズンには回復するのですが、この年はコロナ禍が直撃し外国人観光客のみならず国内の移動も制限されたことにより、客室稼働率は2020年4月に一桁台の5.8%を記録します。

学校も臨時休校、多くの会社でリモートワークとなり、京都市民ですら街中を出歩くことが少なかった時期であり、スーツケースを引いて観光に訪れる人など皆無の時期でした。

それまで外国人観光客増加に伴うバスの混雑や、祇園での舞子パパラッチなど観光公害が連日報道されていましたが、その喧騒がぱったりと止み街が静寂に包まれた時期でした。

その後、Gotoトラベルの実施により観光客数は回復し、客室稼働率も回復しはじめます。2020年11月の紅葉シーズンには63.2%まで回復しました。

しかしその後はコロナ第3波、第4波と蔓延防止法適用により、客足は減少し客室稼働率は20%台から30%台で伸び悩みます。その後、2021年7月に東京オリンピックが開催されると、その影響を大きく受けて82.4%まで回復しました。2年ぶりの80%台です。

8月以降はオリンピックの反動で再び宿泊者数は減少します。感染者数は減少傾向にあり秋には59.6%を記録しますが、オミクロン株の増加による第5波の影響を受けて再び低迷している状態です。

外国人観光客や国内の移動制限により長期宿泊者が減ったことや、日帰り観光客が増えたことも宿泊者減少も要因と考えられます。京都府民向けの格安ホテルサービスなども提案されていますが、どれだけ効果があったかは分かりません。

宿泊施設数の推移

次に京都市の宿泊施設数の2021年3月から2022年2月までの推移を見てみたいと思います。

データの出典は同様に京都市観光協会データ月報です。

グラフを見ると毎月、宿泊施設が減少していることが分かります。2022年2月のデータをみると、2022年1月の3611件から2022年2月は3596件と15件減少しており、その内訳は13件開業、28件廃業、差し引き15件減少となっています。

施設数は減っていますが、客室数は実は増えています。最近開業している施設は主に体力のある大手の客室数の多いホテルになります。外国人観光客向けの簡易宿泊所などは廃業によって数を減らしています。

コロナ禍以前の観光ブームの際、京都市長は「京都市にはホテルが不足しており、2020年には4万室の客室が必要である」という試算を発表し、その後、東京オリンピック特需を見込んだホテル建設、民泊ブームが起こりました。街中の古民家や長屋を改造した民泊が増え、外国人観光客が急増しました。またホテル建設も過熱し、用地取得のために旧小学校の跡地やマンション用地がホテルに転用されたりしたため街中の地価高騰にもつながりました。

このころ計画され建設を始めたホテルが、最近になってようやく完成しだしたのでした。しかし利益を見込んで建てられたホテルも当てが外れ、中にはコロナ禍によってオリンピック特需が限定的と判断されたため、完成予定日が調整されたり、完成はしたものの開業していないホテルもあります。

おわりに

京都市にはたくさんのホテルがあります。夜ホテルを見上げると明かりがついていて稼働してる部屋が分かるのですが、あまりに稼働している部屋が少なく本当にやっていけるんだろうかと心配になることもあります。また、ホテルだけではなく京都市の観光・宿泊サービスに関わる業界の裾野は広く、携わっている方もたくさんいらっしゃいます。

コロナ禍が始まってそろそろ2年になりますが、これまでたくさんあった外国人向けの居酒屋などの飲食店や体験サービス業などは業態の転換を迫られ、街中を歩くと廃業や別の店舗になっているケースも多く見られます。

これだけコロナ禍が長続きすると、観光公害は無くなったものの、これまでの生活を維持できないレベルまで収入が低下してしまい本末転倒です。

また、上に述べたように建設したは良いが開業しても利益が見込めないため、開業時期が延期されたりそもそも開業時期が不明なホテルもあります。これらは土地の有効利用、雇用の創出といった点ではまったく地域に貢献できておらず、少なくとも今の観光を取りまく環境を考えると、このまま不良債権化する可能性もあるため早急に何らかの手段が必要かと思います。

京都市から若い世代が流出しているというニュースもあり、市にお金がないのは分かっていますが、魅力ある街にするために、これら市民の職住環境改善を優先的に対応してもらいたいと思います。