1. 京都市観光客数の時系列推移(2000年〜2023年)
総観光客数の推移
京都市の観光客数は、2000年頃から着実に増加し、コロナ禍前の2018年には年間約5,275万人、2019年には約5,352万人とピークを迎えました。しかし、コロナ禍の影響で2020年、2021年は大幅に減少し、特に2021年は約2,102万人まで落ち込みました。その後、徐々に回復し、2023年には約5,028万人まで回復しています。

宿泊客数の推移
- 日本人宿泊客数:2000年の約902万人から、2019年には約937万人へと微増。コロナ禍で大きく落ち込んだ後、2023年には約939万人とコロナ前の水準を回復。
- 外国人宿泊客数:2000年の約40万人から、2018年には約450万人と10倍以上に増加。コロナ禍で2021年には約5万人まで激減したが、2023年には約536万人とコロナ前を大きく上回る水準に回復。
- 修学旅行生数:2018年の約95万人から、2019年には約70万人へと減少したが、2023年には約81万人と回復、コロナ前を上回る水準に。
2. 2023年の月別観光客数
2023年の月別観光客数は以下の通り推移しています(単位:千人):

特徴として、3月の春季と10月〜11月の秋季に観光客が多く、特に3月と11月にピークがあることが分かります。2月は最も観光客が少ない月となっています。
3. 日本人観光客の動向
時系列推移
日本人観光客数は2019年に約4,466万人でしたが、コロナ禍で大きく減少。2023年には約4,319万人まで回復し、コロナ前の約97%の水準に戻っています。
2023〜2024年の特徴的な変化
2024年の調査では、日本人観光客に顕著な変化が見られました。京都市が2024年秋に実施した調査によると、有名観光地では日本人観光客が前年比で約15%減少した一方、外国人観光客は約30%増加しています。

特に減少率が高かった観光地は:
- 北野天満宮:前年比-42%
- 伏見稲荷大社:前年比-23%
- 清水五条と祇園花見小路:前年比-19%
- 金閣寺:前年比-19%
- 錦市場:前年比-16%
- 嵐山の渡月橋:前年比-11%
一方、日本人観光客が増加した地域は:
- 京北エリア:前年比+59%
- 伏見(伏見稲荷大社以外):前年比+29%
- 山科:前年比+25%
- 西京:前年比+23%
- 高雄:前年比+10%
この現象は、外国人観光客の急増による混雑を避け、日本人観光客が京都の中心部から郊外や穴場エリアへとシフトしていることを示しています。「中心地には行きたくない」という声も聞かれており、オーバーツーリズムに対する日本人観光客の反応が見て取れます。
4. 外国人観光客の動向
時系列推移
外国人観光客は2018年に約450万人(宿泊客)と急増し、コロナ禍で激減。2023年には約536万人と過去最高を記録し、コロナ前比で約41%増加しています。
国籍別構成(2023年)
2023年の外国人宿泊客の国籍別内訳(実人数・千人単位):

- アメリカ:779千人
- 中国:716千人
- 台湾:704千人
- 韓国:454千人
- オーストラリア:294千人
- 香港:235千人
- シンガポール:193千人
- フランス:171千人
- イギリス:168千人
- イタリア:141千人
地域別構成比:
- アジア:49.5%
- ヨーロッパ:18.4%
- 北米:17.0%
- オセアニア:6.0%
- その他・不明:9.1%
観光消費額
外国人観光客の2023年の消費額は約5,084億円(2019年は3,318億円)で、1人当たりの消費額単価は全体平均で71,661円、宿泊客は87,208円、日帰り客は23,726円となっています。
2024年の傾向
2024年は引き続き外国人観光客が増加し、特に京都市内の有名観光地での外国人比率が高まっています。2024年秋の調査では、前年同期比で約30%の増加が見られました。
5. 修学旅行の動向
時系列推移
修学旅行生数は2000年に約99万人、2018年に約95万人でしたが、2019年には約70万人に減少。コロナ禍で大きく落ち込んだ後、2023年には約81万人まで回復し、2019年比で約15%増加しています。
2023年の詳細データ
- 合計:810,537人
- 小学校:131,251人(16.2%)
- 中学校:500,579人(61.8%)
- 高校:178,707人(22.0%)
- 平均宿泊日数:1.63泊
- 小学校:1.11泊
- 中学校:1.72泊
- 高校:1.74泊
発地別構成(2023年)
- 小学校:中部70.9%、近畿14.0%、中国7.5%が上位
- 中学校:関東56.0%、九州・沖縄17.1%、中部15.6%が上位
- 高校:関東32.8%、東北31.1%、北海道15.3%が上位
全体では、関東(42.1%)、中部(23.6%)、九州・沖縄(12.2%)からの修学旅行生が多い傾向です。
6. 宿泊施設の状況(2024年)
2024年の京都市内の宿泊施設の状況は以下の通りです:
- 客室稼働率:78.5%(2023年の73.4%から上昇、2019年の81.3%には未到達)
- 平均客室単価:20,195円(2023年の17,403円、2019年の15,610円を上回り過去最高)
- 客室収益指数:15,853円(2023年の12,774円、2019年の12,691円を上回り過去最高)
これらのデータから、宿泊単価は上昇しており、施設側が「量より質」の経営にシフトしていることがうかがえます。
7. 観光消費額と経済効果
2023年の観光消費額は1兆5,366億円(2019年比 +24.3%)、経済波及効果は1兆7,014億円(2019年比 +25.4%)と、どちらもコロナ前を大きく上回り過去最高を記録しています。この増加は主に外国人観光客の消費額増加によるものと考えられます。
8. 最新の課題と対応
オーバーツーリズム問題
京都市は外国人観光客の急増による混雑緩和のため、以下の取り組みを進めています:
- 時期・時間・場所の分散化
- 混雑状況・観光快適度の見える化
- 交通対策(観光バスの路上滞留対策など)
- 市バスの混雑対策
日本人と外国人の「すみ分け」現象
2024年の顕著な特徴として、日本人観光客と外国人観光客の「すみ分け」が進んでいます。日本人観光客は混雑を避け、穴場スポットや郊外へとシフトしており、京北エリアなどが新たな人気スポットとなっています。
まとめ
京都市の観光状況は、コロナ禍からの回復期を経て、2023年以降、新たな段階に入ったと言えます。特に外国人観光客数はコロナ前を大きく上回り、消費額も増加していますが、日本人観光客の「定番観光地離れ」という新たな課題も生じています。
修学旅行生数も回復し、宿泊単価の上昇による観光消費額の増加が見られる一方、特に有名観光地でのオーバーツーリズム問題が深刻化しています。京都市は「持続可能な京都観光」の実現に向けて、市民生活と観光の調和を目指した対策を進めています。
今後は観光客の分散化を促進し、京都の多様な魅力を活かした観光コンテンツの造成が重要となるでしょう。また、外国人観光客の増加に伴い、日本人観光客と外国人観光客がそれぞれ異なる京都の魅力を楽しめる環境づくりが課題となっています。