伏見稲荷大社の不思議(4)

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日本人にも外国人にも人気の伏見稲荷神社を紹介しています。稲荷山を巡るお山巡りを通して伏見稲荷の神秘的な空気をぜひ味わっていただきたいと思います。

前回までは御膳谷のお塚群までを紹介しました。第4弾となる今回は、稲荷三峰の裏手にあるまさに稲荷山の「裏の秘境」を紹介します。

年輪のように刻まれた重厚な稲荷山の歴史と人々の信仰心が現代まで脈々と受け継がれてきた京都随一のパワースポットは必見です。

第1弾と第2弾、第3弾は以下をご覧ください。

御膳谷 分岐点

御膳谷からは二手に道が分かれます。
左手は清明の瀧、傘杉社を通って薬力社へ向かうコース、右は春日峠を通って薬力社へ向かうコースです。
時間を短縮したい場合は右手の春日峠から薬力社を目指します。

春日峠

御膳谷分岐点を右手に進むか、もしくは祈祷殿方向へ進むと、やや上りの階段が続いています。
春日峠と呼ばれる場所で、御膳谷と薬力社を繋いでいます。
明治44年(1911)、春日峠の近くで経巻の軸十本とともに古鏡・華瓶・合子・古銭等、三十二種類の収蔵品を納入した陶製の経筒が発見されています。

清瀧への参道

一方、春日峠を進まずに、御膳谷から沢を下ると清滝方面へ向かうことができます。

参道のほとりに細いせせらぎがあり、この沢の水がこの先で瀧となっています。

清らかなせせらぎです。御膳谷に流れ込んだ雨水が沢の水となって流れ出ています。

清瀧

清瀧社です。瀧があるせいか鳥居や石碑が苔むした独特の雰囲気を醸し出しています。鳥居はとても背が低く、右手に清滝があります。

先ほどのせせらぎが瀧となって流れ落ちています。
行場として古くから人々の信仰があるといわれています。
近くに伏見稲荷大社直轄の清瀧勤番所があります。

周辺のお塚は急な斜面に林立しており、こちらも青々とした苔に覆われています。

清瀧大神を祀る社殿です。

中央に見えるのが社殿、右手の斜面に並ぶのがお塚です。

清明舎

清瀧から稲荷山方面に戻ってくると清明舎が見えてきます。

清明舎も行場のひとつでこの建物の裏手に清明の瀧が設けられています。
比較的大規模な建物が建っており、宿泊も可能ということです。

天龍社

清明舎から階段を登ると左手に天龍社が見えます。

石柱には伏見稲荷講社とありますので、こちらも一般信者による社殿のようです。左の石柱には舞鶴天龍支部と書かれています。

三本杉社

三本杉を御神木とする社です。

古い杉には霊力が宿るとされており、特に寺社仏閣の建築材料として使われる杉には特別な思い入れがあるようです。
この三本杉社の隣には一本杉を祀る社があり、稲荷山の杉がいかに大切にされているかが分かります。

三本杉のうち一本は枯れて幹しか残っていません。

三本杉大神を祀る社殿です。

薬力社 分岐点

御膳谷から清明舎、傘杉社を抜けるルートを進むと薬力亭の手前で合流します。
清明舎ルートはマイナールートですので、ここでメインルートに戻ることになります。
上の写真は傘杉社方面から薬力社方面を見上げたところです。

薬力亭横にある合流地点の道標

向かって右が晴明舎、直進すると春日峠です。左手前が薬力社になります。

薬力社 お塚 薬力亭

春日峠を下ると、右手斜面一杯に並ぶ薬力社のお塚が見えてきます。清明舎方面から来てもここで合流します。

実はお塚とお茶屋さんが一体化しているのですが、うまくその雰囲気を取りこんで華やかさに昇華させるという、稲荷山独自のお茶屋さんです。こじんまりしていますが、一服できます。

数々のパワースポットの中、言わば厳しい修業のようなお山巡りの道中に巡り合える貴重な休憩所です。疲れた体と頭を休め、ほっとした気持ちになれます。

薬力社はその名の通り、無病息災、万病平癒に効能があるとされ、この先にあるおせき社は風邪・喘息など喉の病に効能があるとされます。そのため歌や芸能に携わる人たちも数多く訪れているとされ、御茶屋薬力亭の「のれん」にも見たことのある名前が連なっています。

薬力亭とその周辺地図

お山巡り周回ルートを再確認します。全体の1/3程度を踏破しました。

薬力社

薬力社の社殿です。
社殿には一対の親子狐が鎮座しており、安産の象徴として、古来より子孫繁栄、家内安全祈願の対象とされています。

また、「ねがいかけ草鞋」という草鞋があり、これを奉納すると藁でできた草鞋という所から「藁にもすがる思い」が成就すると言われ、身体健康・病気平癒・旅行安全に効能があるそうです。

願いかけ草鞋(わらじ)

また、手押しポンプで地下水をくみ上げることができ、このご神水で薬を飲むと、薬の効果がUPするといわれています。

手押しポンプ井戸による御神水

薬力亭一帯を上から見たところです。左が薬力社、右が薬力亭です。

薬力の瀧

薬力社の奥には薬力の瀧があります。

稲荷山の最上流のお瀧として古くから行場として信仰を集めています。

おせき社

おせき社には数々の鳥居が奉納されています。

おせき社はもともと「関所」通行の社であったとされていますが、いつのころからか咳にご利益のある社になっていったようです。


おせき社の横を登る階段です。この先の長者社(御劔社)へと繋がっています。

長い階段を振り返ると、薬力社の谷が一望できます。

三劔家

薬力社を過ぎ、長い階段を登ると「御劔社」があります。「長者社」とも呼ばれます。

その前にある御茶屋が「三劔家」です。
ここは稲荷山で最も奥まった位置にある社、そしてお茶屋です。
山の谷間に位置しているため、昼間でも、薄暗く、辺りは静寂に包まれています。

長者社 御劔社

長者社の鳥居です。鳥居をくぐって右手が御劔社の社殿です。
奥に見えるのがお塚の数々です。階段の上までお塚が広がっています。
かつて、この地には秦氏の祖霊を祀った社があったとされています。
その社は稲荷山でも最も古い部類のものであったということです。

その後、この地には「加茂玉依姫(かもたまよりひめ)」という、鍛冶および火の神を祀る御劔社が建てられました。
社殿の裏手には「雷石」「御劔石」という巨大な神石が祀られており、雷が封じられているとも言われます。

このように秦氏の祖霊を祀った社ということから 、 御劔社 は稲荷山の神蹟地のうちのひとつになっています。

御劔社

剣の形をしたユニークな手水です。

また、下の写真にあるように「焼刃の水」と呼ばれる小さな井戸があり、謡曲『小鍛冶』の中で当時の名工、三条小鍛冶宗近が名剣「小狐丸」を鍛えたとされる場所でもあります。このとき、稲荷山の狐が現れて、相槌となって御剣を打つのを手伝ったとされています。
このように「火」や「雷」や「鉄」といったキーワードから、鍛冶や鉄工関係者に馴染みの深い神と思われていますが、それだけにとどまらず、科学工業の技術全般について成就祈願に訪れる方が多いようです。

尚、同じような井戸が石清水八幡宮にもあり、相槌稲荷として祀られています。

御劔石

御劔社の霊石「御劔石」です。「雷石」とも呼ばれます。
古くからこの地にある巨大な一枚岩で、注連縄を巻いたその姿は神々しい霊力が宿っているかのように見えます。

社殿側から見た 「御劔石」です。社殿のちょうど背後に御神石として鎮座しています。

ここで再度、地図を確認します。ここから春繁社を超えて、稲荷三峰を目指します。

参道の眷属

参道で出迎えてくれる稲荷の眷属「狐」です。

賢そうな顔立ちで耳が四角く、目が細いのが特徴で、神の使いとして人々に親しまれています。下の写真は2013年当時の 御劔社 を過ぎたところにいる狐です。

ここで「狐」と「稲荷神」について説明します。
狐はあくまで神の使いである眷属であり、稲荷神そのものではありません。

稲荷神の一柱である「宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)」は「倉稲大神」とも記述されます。つまり稲の神であり、田の神でもあります。また、五穀豊穣を司る食物神の総称「御食津神(みけつかみ)」とも同一視され、これは「三狐神(みけつかみ)」とも記述されることから稲荷神と狐の結び付きが強くなったと想定されます。

また、稲荷狐には宮中に出入りする「命婦(みょうぶ)」の名が与えられ、神に仕える巫女と同一視されたことからこれが命婦神(みょうぶがみ)と呼ばれ上下社に祀られるようになります。
伏見稲荷の狐は必ず2体一対で配置され、向って左の狐は巻物、向って右の狐は宝珠を加えているのが一般的です。
ちなみに、楼門のむかって左の狐は鍵を、内拝殿の向って左の狐は稲穂をくわえています。

こちら2019年の狐です。台座がだいぶ苔むして、体も錆びて茶色くなっています。目つきは相変わらず厳しい目つきですが・・。

こちらは対になっている対面の狐です。

春繁社

こちらも五穀豊穣の神を祀る春繁社です。


地図を見てもわかるとおり、周回コースの最東側のコースに面しています。
距離的にはこのあたりがお山巡りの折り返し地点になりますが、高低差の関係上、本当の山場はこれからになります。

一の峯への階段

ここから一気に一の峰、つまり稲荷山の最高峰まで階段を上ります。

目指すは遥か前方の一の峯です。

その高低差はお山巡りの中でも最大で、そして最後の難所でもあります。
この傾斜の階段がしばらく続きます。参拝というより登山の気分です。夏場は水分補給を忘れずに自分のペースでゆっくり進みましょう。

第4弾はここまでです。次回第5弾に続きます。