伏見稲荷大社の不思議(3)

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商売繁盛の神様でもある伏見稲荷大社は、毎年初詣の参拝客が250万人も訪れるという京都で人気の神社です。

稲荷山を巡るお山巡りを通して伏見稲荷の神秘的な空気をぜひ味わっていただきたいと思います。今回は第3弾となり、四ツ辻から田中社、大杉社、眼力社、御膳谷を紹介します。

第1弾と第2弾は以下をご覧ください。

四ツ辻の賑わい

長い階段を登り切ると、京都洛南地域を一望できる広場に到着します。

これまで続いていた鳥居の回廊がここでは一旦途切れ、天を仰ぎ見ることができます。

振り返ると京都南部エリアが一望できます。ベンチに座って休憩したり、お弁当を広げたり、多くの人で賑わいます。

鳥居が途切れ、視界が広がり見晴らしは抜群です。

ここは「四ツ辻」の名前の通り、四差路になっており、この先、荒神峰に続く参道、御膳谷に続く参道、三の峯に続く参道の3手に分かれています。

広場の脇には御茶屋さんがあり、そのひとつが「仁志むら亭」です。
創業は1864年、当初は神饌品を扱っていましたが、 参拝者の休憩所として飲食も始められたそうで、お茶やジュース、アイスクリームなどで渇きを潤したり、昼食を頂いたりすることができます。ちなみにここは俳優「西村和彦」さんの実家で、御両親とお兄さんが経営されております。

荒神峰参道から御幸奉拝所への分岐点

四ツ辻から向って左(北)の方角、荒神峰の方へ向かいます。
少し階段を進むと左手に御幸奉拝所への参道と年季の入った古い鳥居が見えてきます。

御幸奉拝所は1963年(昭和38年)に開かれた新しい奉拝所で、奉拝所の奥には横山大観の筆塚があります。
奉拝所の先を更に下っていくと東福寺の奥の住宅地に抜けることができます。(京都一周トレイルコースの一部です)

荒神峰-田中社への参道-奥村亭

御幸奉拝所へは分岐せず、そのまま急な階段を登ると、「権太夫大神」を祀る田中社へたどりつきます。


階段の途中右手には御茶屋「奥村亭」があります。

荒神峯 田中社 権太夫大神

「権太夫大神」を祀る田中社です。稲荷山の神蹟地の一つになります。

田中社に祭られる権太夫大神は、伏見稲荷大社の本殿にも祀られている主祭神五柱の中の一柱であり、田中大神賀茂建角身命【かもたけつのみのみこと】または大己貴命【おおなむちのみこと】とも言われています。
賀茂建角身命は賀茂御祖神社(下鴨神社)のご祭神で、天照大御神の命を受けて日向の曾の峰に降臨し、大和の葛木山に至り、八咫烏に化身して神武天皇を先導しました。
田中社は秦氏より前に山城の地に住んでいた賀茂氏が賀茂建角身命を祀るために稲荷山に祭祀したものと考えられます。
大己貴命【おおなむちのみこと】は大国主命【おおくにぬしのみこと】の若い頃の名前と言われます。

社殿奥の御祭神(御神石)

田中社の社殿の奥に鎮座している御神石です。

荒神峰 田中社のお塚

田中社の御神石を中心に周囲にお塚が広がっています。
権太夫大神が稲荷三峯の神ではないためか、稲荷の狐ではなく、通常の狛犬となっているお塚があります。

また、お塚の先は京都市南部を一望できる展望所となっています。

荒神峰展望台

田中社のお塚の裏手に展望台へつながる道があります。
せっかく長い階段を登ってきたので、展望台へも足へ運ぶことをお勧めします。

展望台というとおおげさですが、山の南西方向の木々が無いため、遠くまで見渡せるスポットです。

展望台からの遠景

下の写真は展望台から南西方向(京都市南部)を見た景色です。
中央に見える茶色のビルは京都市伏見区竹田にある「京セラ」の本社ビルです。
奥には右手に天王山、左手には石清水八幡宮が鎮座する男山があります。
山と山の間は京都と大阪が接する木津川、宇治川、桂川の合流地点です。その先は高槻を経て大阪に至ります。

手前の茶色い建物群は龍谷大学の伏見キャンパスです。
少し奥に左右に通っている高架線は阪神高速8号京都線です。
その奥にある赤白の電波塔が立っているのはNTTコミュニケーションズのビルです。
さらに奥には日本電産本社ビルが見えます。尚、この展望台は南西を向いているため、北に位置する京都駅ビルや京都タワーは見ることができません。

京セラ本社ビル(伏見区)
村田製作所本社ビル(長岡京市)
NTT電波ビルと日本電産本社ビル(南区)
任天堂本社ビル(南区)

そして、遠くは大阪の梅田のビル群やあべのハルカスまで見渡すことができます。男山の右に見えるのが梅田の高層ビル群、男山の左に見える特徴的な高層ビルがあべのハルカスです。

梅田の高層ビル群
あべのハルカス

稲荷山とその周辺

以下は稲荷山からの景色ではありませんが、参考にどうぞ。

竹田付近の鴨川から見た赤白の電波塔の乗ったNTTコミュニケーションズのビルです。右側の塔はNTTドコモの電波塔です。

更に鴨川を下った所です。桂川(左)と鴨川(右)の合流地点です。桂川はさらにこの下流で木津側と宇治川と合流します。

遠方正面に見えるのが京セラ本社ビルで、その右の山が稲荷山になります。

大杉社への参道

再び四ツ辻からお山巡り周回コースを再開します。
参道としては四ツ辻を拠点に三ヶ峯方向へ向かうルートと、御膳谷奉拝所方向へ向かう2ルートがあります。


正式ルートは御膳谷奉拝所から三ヶ峯へ向かうコースと言われます。

大杉社

大杉社はその名の通り、大きな杉の切り株を御神木としており、建築関係の方々の信仰が厚いそうです。

杉は稲荷大社とも縁が深く、初午大祭の日には、杉の小枝を供える習わしがあり、「験(しるし)の杉」と呼ばれています。
これは、平安時代、稲荷社に参拝した証として杉の小枝を家に持ち帰ったのがはじまりで、商売繁盛・家内安全のご利益があると言われています。

大杉社の御神木です。注連縄の巻かれた杉の大木が鎮座しています。

眼力社

眼力大神は目の病気や、視力回復にご利益があるされます。
また、事業の先見性や、商売の目利きの向上を祈願される方も多いようです。

眼力社 手水と眼力亭

眼力社の手水は面白い形をしており、水が狐の口から流れ出ています。

上の写真は2013年のもの。下の写真は2019年の写真です。

眼力社の目の前にあるのが眼力亭です。この眼力亭とこの先の御膳谷奉拝所は比較的新しい建物になっています。
願力と書いて「がんりき」とも呼ぶようです。

御膳谷奉拝所

御膳谷は稲荷山三峯の裏手(北側)に位置する谷です。

かつてはこの地に神饗殿(みあえどの)と御竈殿(みかまどの)があり三峯の神々に神供をしたところと伝えられています。

現在では祈祷殿において毎日朝夕お山の神々に御日供(おにっく)をお供えしています。毎年一月五日の大山祭には故事にもとづいて斎土器(いみどき)に中汲酒(なかくみざけ)を盛り「御饌石」(みけ いし)とよばれる神石の上に供進されます。

四ツ辻からはずっと下りの道なので、御膳谷までは楽に進んでこれます。また、山の北側にあるせいか夏でも日陰で比較的涼しい場所になっています。
ここも狐ではなく、狛犬が鎮座しています。この鳥居の先に祈祷所があります。

御膳谷 祈祷所

毎年1月5日の大山祭が執り行われるのがこの祈祷殿です。
古くからの根本道場であもあり、日々の御日供もここに供えられます。

御膳谷 祈祷所 御饌石

祈祷所の中には一般参拝者が奉納した御日供が並んでいます。

祈祷所
御饌石

祈祷殿の裏手には上の写真の御饌石(みけいし)とよばれる神石があり、山上の三ヶ峰の社に「かわらけ」と呼ばれる神饌が供進されます。

御膳谷周辺のお塚

御膳谷のお塚の数は稲荷山で最も数が多いとされています。
ご覧の通り、無数のお塚がまるで墓石のように林立しています。

ここでお塚について説明します。
お塚とは個人の祭祀者が稲荷神を祀るために建立した石碑や鳥居のことで、これらは伏見稲荷大社が直接管理しているものではありません。


稲荷山が他の神社と異なるのは稲荷神を個人で自由に祀ることができ、また、自由に祈りを捧げることができることです。(設置には許可が必要)
そのため、稲荷山には次々とお塚が建立され、現在では一万基以上のお塚があると言われています。

「稲荷山」とは伏見稲荷大社が管理している7神蹟(上ノ社・中ノ社・下の社・田中社・荷田社・御剱社・御膳谷遙拝所)とその他、一般信者が私的に築いた膨大な数のお塚群の総体なのです。

林立するお塚には祭祀者のそれぞれの思いが込められており、その数だけお稲荷さんへの信仰があるということです。
この場にくると、普段の俗生活では味わうことのできないその信仰エネルギーの雰囲気を感じることができ、パワースポットと言われる所以を直に体験できます。

御膳谷周辺のお塚 その2

たくさんのお塚の中には伊邪那岐尊(イザナギノミコト)や伊邪那美尊(イザナミノミコト)を祀っているところもあります。

尚、2018年の台風による倒木により一部通行止めになっているエリアがあります。

奥村社

御膳谷には大きな社を持つお塚が二つあります。
そのひとつ奥村社です。

鳥居の左右には凛々しい馬が配置されており、参拝客を出迎えてくれます。

力松社

御膳谷祈祷殿の奥にあるのが力松社です。
こちらも社殿があり、背後には御神石が祀られています。

第3弾はここまでです。四ツ辻から御膳谷まで紹介しました。第4弾に続きます。