以前、京都市にタワーマンションが無い理由について、紹介しました。(下記リンク参照)
有効な宅地の少ない日本の多くの都市では、住居となるマンションを平面的に増やすのではなく、高さ方向に層を積み上げ高層化させることで、住宅地の延べ床面積を稼いでいます。その最たる例がタワーマンションです。
東京などの首都圏では港区や江東区の湾岸エリア、横浜ではみなとみらいを中心とした沿岸部、関西では大阪市北区の梅田周辺や中央区の淀屋橋、北浜周辺、そして、神戸市中央区に多くのタワーマンションが見られます。
皆さん、何となくタワーマンションの立地が想像できたでしょうか。私はタワーマンションと言えば駅のすぐ近くや眺望のよい水辺の近くといったイメージを持ちます。高いお金を出して買うのですから、他には無いメリットが必要ではないでしょうか。
さて、このように近代都市の象徴とも言えるタワーマンションですが、以前紹介したように京都市にはタワーマンションはありません。本来、人口が密集するはずの京都市の中心部においても昔ながらの町家の保全活動が行われたり、景観を重視するため、需要があったとしてもタワーマンションを始めとする高層マンションを建てることはできないのです。
尚、京都のお隣、滋賀県では大津市や草津市など人口増加が著しいエリアでタワーマンションの建築が進んでいます。
そんな事情もあり、京都のマンションの階数は他の都市と比較して低く抑えられています。
今回は、各都市各エリアにおける賃貸マンションの高さを数値化してみました。合わせてそのマンションが駅からどれほど近いのか、最寄り駅までの徒歩時間も併せてグラフ化してみました。
京都市のマンションの高さ(平均階数)はどれくらいか
さて、では早速マンション高さを見てみましょう。
下のグラフは京都市各区と長岡京市、向日市、大山崎町の賃貸物件の建物高さ(階数)の平均値です。
一番高いのは、下京区の6.2階、続いて2番目は中京区の5.5階となりました。3番手、4番手はそれぞれ南区と上京区になります。小数点第1位までは同じで4.4階となっています。
下京区と中京区にはいわゆる「田の字地区」と呼ばれるエリアがあり、このエリアには建物の高さ制限があります。北は御池通、南は五条通、東は河原町通、西は堀川通までです。
このエリアのうち、大通りに面しているエリアは高さ31mまで、大通りに面していないエリアは15mまでと建物の高さ制限があります。15mの高さで5階くらいなので、下京区と中京区では規制ギリギリまでの高さのマンションが多いということになります。
もちろん、下京区、中京区は京都市街の他の字地区だけではなく、その周辺の低層エリアも含みます。低層エリアには木造2階建ての町家なども含みます。ですので、個人的にはこの6階や5階といった平均値の結果は思ったより高い印象を受けました。
さて、続いて建物高さ(階数)と最寄り駅までの距離についてどのような関係にあるか図示してみたいと思います。最寄り駅までの距離は物件に記載されている最寄り駅までの徒歩時間の数字を引用しました。今回は距離ではなく時間です。短い方が近いということになります。
下のグラフは京都市と長岡京市、向日町市、大山崎町の各エリアのマンションの平均高さを横軸に、最寄り駅までの徒歩時間の平均を縦軸としたグラフです。
先ほど建物高さの高かった下京区と中京区は最寄り駅までの時間においても約6分と、他の区よりも2分ほど短くなっていました。駅近にある物件が多いようです。徒歩1分は80mで計算されますので、6分ということは駅から480mの距離ということなります。
下京区にある駅といえば、京都駅、四条駅(烏丸駅)、京都河原町駅、大宮駅です。場合によっては京阪の祇園四条、清水五条、七条も最寄り駅に入ってくるかもしれません。下京区の物件はこれらの駅から平均して480m程度の距離にあるということになります。京都は地下鉄はありますが、2路線しかなく、あまり発達していません。地下鉄の乗降客の推移については以下を参考にしてください。
その中でも下京区と中京区は駅の数としては比較的多い恵まれた地域ではあります。予想ではもう少し遠い結果と考えていましたが6分なので意外と近いことが分かりました。
各マンション毎の高さと最寄り駅までの時間をプロットしたものを示します。最も高いマンションは20階建てです。実はこの20階建てのマンションは長岡京市にある駅に隣接するマンションになります。京都市外であり、高さ制限エリアの外の物件です。京都市のノッポビルとして有名なのは他にも京都駅ビルや日本電産本社ビル、京セラ本社ビル、村田製作所本社ビル、NTTビル、京都ホテルがあります。2番目に高い16階のマンション2棟はいずれも中京区にあるマンションになります。
大阪市のマンションの高さ
さて、では他の都市はどうなっているのでしょうか?
大阪市、神戸市、東京と順に見ていきたいと思います。まずは、お隣の大阪市を見てみましょう。
大阪市のランキングでは中央区9階、西区8.5階、浪速区7.9階となっています。大阪市の市街エリアはタワーマンションもありますし、京都市のような厳しい制限はありませんのでおのずと市街地の人口密集地には高層マンションの需要が高まり、建物高さも高くなっているようです。一番低い旭区でも平均4.5階なので、京都市よりも高層のマンションがかなり多いと言えます。
そして、駅からの距離も近い物件が多いようです。大阪市は地下鉄も発達しており、大阪環状線の内側エリアは最寄り駅までの距離が平均5分程度、大正区以外は10分以内となっており、かなり利便性が高いようです。
今回抽出した大阪市でも最も高層な物件は中央区の北浜にある54階(209m)の物件「ザ・北浜」でした。気になる賃料は47階の2LDK,80m2で36万円となります。夢のある都心の超高層マンションですが、ちょっと手が出ないですね。
神戸市とその周辺エリアの建物高さ
続いて、神戸市と芦屋市、西宮市、尼崎市の建物高さランキングです。
1位は中央区、2位が兵庫区、3位が東灘区となりました。
やはり、京都市よりも高いですね。神戸市など阪神間エリアは六甲山と大阪湾の間のなだらかな丘陵地に立地しており、宅地に適した平地が少ないため、高層化もしくは、地価高騰の傾向があります。
続いて最寄り駅までの時間を縦軸にグラフ化したものです。おおむね10分以内となっています。阪神間は阪急、JR、阪神の3線が平行して走っており、また神戸市街を中心に地下鉄も整備されているため、駅までのアクセスは良好です。
神戸市の最高峰高層マンションは三宮にある「シティタワー神戸三宮」でした。54階建て190mで兵庫県で最も高いタワーマンションになります。14階の2LDK(74m2)の気になる家賃は25万円となっており、大阪と比べると割安な印象です。低層の6階であれば2LDK(57m2)で17万円とお手頃です。
東京の建物高さ
関西の京都、大阪、神戸を見てきましたが、ここで東京の様子も確認してみたいと思います。以前、家賃の比較をおこないましたが、関西と比べると東京は圧倒的な家賃の高さでした。
これを踏まえた上で、東京23区のマンションの平均高さを確認したいと思います。
結果は以下の通りです。
1位は中央区の12階、2位は千代田区の11.6階、3位が港区の11階となりました。10階を超えているあたりはさすが東京です。そもそも都心部は低層の建物が少ない印象です。台東区、江東区の平均階数が高いのも近年のタワーマンションラッシュによるものと思われます。
他の都市の結果と同様、最寄り駅までの時間を縦軸にプロットしました。地下鉄が発達していることもあり、全ての区で10分以内となっています。
今回調査で最も高層のマンションは新宿区にある60階建て「ザ・パークハウス西新宿タワー60」でした。家賃は40階2LDK(70m2)で38万円です。
2番目に高いのは勝どきにある「THE TOKYO TOWERS MID TOWER」です。家賃は47階2LDK(70m2)で31万円になります。
各都市の比較
最後に各都市を一つのグラフで図示してみました。少しグラフが縦長となりますがご容赦ください。
各都市ごとに色分けしており、東京23区がピンク色、大阪市がオレンジ色、神戸市が青色、京都市が緑色です。平均高さが10階を超すのは東京都のみでした。今回の調査の主対象である京都市は18位の下京区6.2階が最高であり、やはり他の都市と比べると建物高さは低いことがわかります。
さて、おまけで今回調査した全エリアの建物高さと最寄り駅までの時間をプロットしました。このグラフから各エリアの相対位置が分かります。
しかし、点と文字が重なっていますのでかなり見にくくなってしまいました。文字をなくして分布を確認したものが以下のグラフになります。
赤色:東京23区
青色:神戸市
水色:大阪市
緑色:京都市
分布としては建物高さと最寄り駅までの時間は反比例の関係にあることが分かります。つまり、駅に近いほど建物の高さが高く、駅から遠いほど建物が低いということです。
別の言い方をすると「駅からの距離」と「マンション高さ」の積は一定になります。
京都、大阪、神戸、東京の4つ都市とも同じ傾向が出ており、相関がはっきり出た面白い結果となっています。
今回は賃貸物件マンションの高さについて、その傾向を紹介しました。
今回は賃貸物件マンションの高さについて、その傾向を紹介しました。
機会があればタワーマンションの立地についても別途調べてみたいと思います。