築年数が古いと賃料は安くなるのか?築年数と賃料の関係は?

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4月も2週目となり、日中はずいぶん暖かくなりました。

週末ともなると、京都御苑や鴨川では満開の桜の下でお花見をする京都市民および観光客の方々で賑わいを見せていました。


上の写真は冷泉通の琵琶湖疎水の桜です。ほぼ満開の桜となっており、このあと疎水一面が散った花びらでピンク色に染まります。

岡崎十石舟です。疎水記念館や京都市動物園の南側に船着き場があり、船着き場から疎水を西進し、疎水が夷川ダム貯水池に入るところで折り返します。往復約3km、所要時間約25分の遊覧です。3月下旬から5月上旬まで運行しています。

こちらは烏丸通の東本願寺前の桜並木から見た京都タワーです。東本願寺前は烏丸通が直進するラインと迂回するラインがあり、その間に桜並木があります。元々は京都の市電が1912年に敷設された際、参拝者の安全に配慮するため、市電の線路が迂回ルートとなったされています。

 さて、このサイトでは京都市各区の間取り毎の賃料や専有面積について、WEB上のリアルデータをもとに定点観測・集計をおこなっています。今回は築年数と賃料の関係にスポットを当てて紹介したいと思います。

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物件選びの重要パラメータは?

皆さんは賃貸物件を選ぶときに、 「賃料」「間取り」 などたくさんあるパラメータのうち、どのパラメータを重視するでしょうか?

賃貸物件を選択するときのパラメータとしては「最寄り駅まで距離」や「マンションの階数」、「間取り」、「広さ」など様々あり、それらのパラメータは全て賃料に反映されます。その中でも物件の新しさ、つまり「築年数」は多くの人にとって物件選定の重要なパラメータになっています。他の人の使用感の少ない、つまり、新しい物件の方が気持ちが良いですよね。

新しい新居で生活をする上であまり古すぎる物件は皆さん敬遠しがちです。特に水回りであるトイレ、お風呂、キッチンなど建築当時の古い設備を使わざるをえない物件は人気が下がり、物件自体の価値が下がってしまいます。

そこで、オーナーによってはトイレやお風呂、キッチンなどの設備を新しくリノベーションしたり、建物自体の外観や内装、間取りまで改築したりすることもあり、最新物件との設備の差を広げないよう努力されている所もたくさんあります。

このように外観は古いが内装や設備は新しいなど、一概に築年数の古さと内装や設備の古さは一致しないこともあります。特に京都は町家を改装したり旧き良き建築物を保存する傾向が強いため、選定の際には物件の写真や内覧をすることをおススメします。

上記のような事情も踏まえて、今回は2019年4月4日時点での京都市内の賃貸物件のWEB上の賃貸データから「築年数」によって物件の「賃料」がどのように変化しているかを見ていきます。

京都市全体の築年数と賃料の関係

まず、母数となる京都市内の各区の物件数を確認します。


対象とする賃貸物件数は京都市内の16,994件です。このうち、今回グラフ化するのは京都市全体と、物件数の多い区域である下京区、中京区、左京区、伏見区の4区の物件の築年数と賃料、専有面積、1m2あたりの賃料(以後、単位賃料)を見ていきたいと思います。

京都市全体の分布


上のグラフは京都市全体の物件の築年数と賃料の散布図です。

全体的に右肩下がりの負の相関グラフになっていることが分かります。回帰直線の傾きは-0.07なので、1年経つと0.07万円つまり700円賃料が下がることを意味しています。10年で7000円の下落になります。

今このタイミングで物件を選んだとすると築10年の物件は築0年の新築物件より7,000円安く、築20年の物件は14,000円賃料が下がります。逆に言うと10年前の物件と比較して今の物件は7,000円価値がアップしているとも言えます。つまり10年分の地価や物価の上昇分による賃料のアップ分がグラフに反映されているとも言えるのです。

また、サンプル図の上に描かれたヒストグラムを見るとどの年代の物件が多いかが分かります。京都市全体では築30年付近をピークに裾野が広がっている分布になっており、物件数は30年前からだんだん減っていることが分かります。

古い物件がWEB上にたくさん残っていて新しい物件は人気が高くWEB上に出た途端に成約するため、実際の物件数よりも少なく見えている可能性もありますが、それを裏付けるデータは現在入手できませんので、WEB上のデータを現在の物件数として話を進めます。

次に築年数と専有面積の関係です。散布図はほとんど真っ青で回帰直線の傾きも-0.04なので、あまり意味のある散布図にはなっていません。このあと各区毎のデータを見て判断したいと思います。

つづいて、京都市全体の築年数と単位賃料の散布図です。こちらは賃料と同じく明らかに右肩下がりのグラフになっており、回帰直線の傾きは-18(-17.96)です。こえれは1年で単位賃料が-18円安くなることを意味しています。10年で-180円であり、仮に専有面積が40m2だとすると築10年の物件で7,200円賃料が安くなります。

下京区

各区の築年数と賃料の関係を見ていきます。まずは下京区です。

散布図を見るとワンルームは築30年前後の物件が多いようです。1K/1DK/1LDK物件はほぼ毎年供給が続いており、賃料と専有面積のばらつきの幅も近年の方が広くなっています。

凡例の右に記された式は各間取りの回帰直線になります。例えば築年数-賃料グラフの3K/3DK/3LDK分布の回帰直線はy=-0.41x+24.29[万円]となっており、築0年の物件で24.29万円、1年古くなるごとに4,100円賃料が安くなることを表しています。この係数で計算すると、10年で41,000円賃料が安くなりますが、築10年(築年:2009年)の物件でも20万円前後の賃料となり、手の出る賃料までは下がっていません。

築年数と専有面積の関係ですが、市全体では明らかな相関は見られませんでしたが、下京区では負の相関、つまり築年数が増加すると専有面積が小さくなる傾向が見られます。逆に言うと新しい物件の方が専有面積が広いという結果になります。

中京区

続いて、中京区の築年数と賃料の関係です。同様に右肩下がりの負の相関の傾向であり古くなるに従い賃料が安くなります。

3K/3DK/3LDKの回帰直線の係数は-0.43となっており、1年で-4,300円、10年で-43,000円と先ほどの下京区よりも傾きが大きくなっており京都市内でもっとも傾きが大きくなっています。

これは見方を変えると、中京区の年毎の賃料のアップのスピードが他の区よりも高いことを表しています。つまり、地価・物価の上昇率が京都市で最も高いのが中京区と言えるということです。市の中心部だけに近年はホテルの乱立による宅地用地の減少が際立っており、地価の上昇引いては賃料の増加を招いていると言えます。

全体的に1K/1DK/1LDKの物件が多いですが、築0年の物件は専有面積の狭い物件から広い物件まで幅広い選択肢があるようです。

 

左京区

続く左京区のグラフです。散布図を見ると築年数20年から50年の間の物件が多いことが分かります。特に2K/2DK/2LDKの物件が5万から10万円の間に集中していることが特徴です。また1K/1DK/1LDKの築年数-賃料 散布図見ても賃料のばらつきが少なく、毎年安定して単身世帯の物件が供給されていることが分かります。学生向けの単身世帯向けの物件が多いため、多種多少な物件は必要ないという見方もできます。

伏見区

最後に伏見区の物件です。こちらも左京区と同様、多くの物件が賃料3万円から10万円の幅に収まっており、区域内のばらつきは市中心部と比較して小さくなっています。回帰直線の傾きも概ね-0.1付近となっており、年毎の変動も小さくなっています。つまり、地価や物価変動が比較的小さいと言えます。

築年数と専有面積の関係についてはこちらも負の相関があり、新しい物件ほど専有面積が広いことを表しています。散布図を見ると20年以内の物件は2LDK以下の物件が多いようです。2LDKより広い間取りは20年以前に集中しています。3LDKなどの新しく、かつ、広い物件を探す場合は、グラフを見る限りは左京区や中京区の方が選択肢は多いようです。

ちなみに面積が広い物件ほど賃料は増加するため、伏見区のデータを単位面積あたりの賃料で比較すると下のグラフとなります。


トイレやお風呂、玄関などの設備はワンルーム、3LDKに限らず生活に必要な設備であり、そのスペースが必要となります。面積あたりの賃料に換算するとこれらの設備のスペースの割合が大きいワンルームや1LDKなど部屋数の少ない間取りの方が単位賃料が高くなる傾向にあります。

おわりに

今回は築年数と賃料・専有面積の関係をグラフにしてみました。

どの区域にどの間取りのどの築年数の物件が多いのか、グラフから確認することができました。また、年数とともにどれくらい賃料が変化するのかも確認できました。

3K/3DK/3LDKの場合、伏見区では1年古くなるごとに1,200円、中京区では4,300円賃料が安くなります。ただし、築0年の物件の賃料は伏見区が11万2600円、中京区が26万3900円と倍以上違うので10年古くなっても賃料が逆転することはありません。

逆に言うと中京区は賃料の高騰率が激しいとも言え、賃料の源泉となっている地価や物価が高騰している地域と言えます。

物価は高いですがその分利便性も高いため、その価値を認めて賃料を払う決断ができれば中京区ライフを楽しむことが出来ます。その逆に賃料を抑えめにしてゆとりある伏見区ライムを楽しむことも同様に可能です。

このように情報をグラフ化し、可視化することで地域の特性を垣間見ることが出来ます。これらのグラフを参考に賃貸物件の選定の参考にして頂ければ幸いです。

今後、他の区に関しても同様のグラフを作成を予定しています。完成したら別途紹介させて頂きます。